行きたい国はたくさんある。でも、どうつなげば『自分の旅』になるのかがわからない。
世界一周を実現しようとすると、単なる国の並べ方だけではうまくいきません。
気候、治安、航空券の価格、ビザの条件。そして、自分がどんな旅をしたいかというスタイル。
そうした要素を組み合わせてこそ、現実的で満足度の高いルートが見えてきます。
本記事では、旅のスタイル別に代表ルートを紹介しながら、
世界一周ルートの設計で押さえるべき判断軸、避けたい落とし穴、地域ごとの注意点までを丁寧に整理しました。
『自分にとって意味のある旅』のかたちを描く出発点として、活用いただければ嬉しいです。
世界一周ルート設計の基本軸
世界一周のルートを考えるとき、「どこに行きたいか」だけに目を向けていてはうまく設計できません。
長期の旅には、旅全体の順番や構成を大きく左右する判断軸がいくつかあります。
中でも特に影響が大きいのが「季節」「治安」「費用」という3つの要素です。
ここでは、それぞれの判断軸について具体的に整理し、どのように旅の順番へ反映させるかを見ていきます。
自分に合ったルートを組むうえでの出発点として、押さえておきましょう。
最初に考えるべき3つの判断軸
世界一周のルートを組む際、最初に押さえておきたいのが「季節」「治安」「費用」の3つです。
これらは、どの国にいつ行くか、どの順番で回るか、そしてどのくらい滞在できるかを大きく左右します。
以下、それぞれの軸について詳しく見ていきましょう。
季節(気候・ベストシーズン)
訪れるタイミングを間違えると、旅の満足度が大きく下がる要因になります。
国によっては乾季・雨季が明確に分かれており、地域をまたぐ移動では季節の逆転(南半球と北半球)が起きることもあります。
- インドのモンスーン
- アフリカの雨季
- 欧州の冬の観光難易度
こうした要素を考慮し、「どこにいつ行くべきか」という視点を持つことが、ルート設計の第一歩になります。
治安(政情・犯罪・衛生)
治安の問題は、旅の自由度だけでなく、安全そのものに直結します。
報道される国以外にも、観光地でのスリや、夜間の移動時に注意が必要な地域は多く存在します。
- 外務省の「海外安全情報」
- 現地在住者のブログ・体験談
- 移動手段ごとの安全性(例:深夜バスの危険性)
「行ってみたかった国」でも、現地の状況を踏まえて柔軟にルートを見直す視点が必要です。
費用(物価・移動コスト)
旅の期間や訪問国の選び方に大きく関わるのが「費用」です。
国ごとの物価差や、大陸間移動のコストは、ルート設計全体に影響を与えます。
- 東南アジア・南アジアは長期滞在向き(宿・食・移動が安い)
- ヨーロッパ・北米は「短めに滞在して質重視」が効果的
- 大陸間フライトは費用も高く、順番次第でコスト差が大きくなる
ルートの効率性だけでなく、「どこに予算をかけるか」という観点も意識するとバランスが取りやすくなります。
行きたい国から逆算するルート設計法
「正解のルート」は存在しません。
だからこそ、自分の「どうしても行きたい国」から出発して、前後の大陸・季節・移動コストを逆算する設計が現実的です。
- 例:南米に絶対行きたい → ベストシーズンは5〜9月 → その前にどこを回るか?
- 例:アフリカを旅したい → 航空券は世界一周航空券+LCCの組み合わせがよさそう
「旅のハイライト」を起点に設計することで、旅全体の軸がぶれにくくなります。
ルート設計のコツ
- ハイライトは最初か最後に置く:モチベーションの維持につながる
- 決まった国があれば、そこを中心に前後を構成:ベストシーズンと逆算思考が重要
- 効率よりも体験を優先する勇気:遠回りにも意味がある
次のセクションでは、こうした判断軸をもとに構成した「旅スタイル別モデルルート」を紹介します。
自分の旅に近いパターンを探しながら、実際のルート設計に活かしてみてください。
世界一周のスタイルは主に3タイプ
世界一周のルートを考えるうえで、まず重要なのが「自分はどんな旅をしたいのか」というスタイルの整理です。
旅のスタイルは完全に分けられるものではなく、実際にはいくつかを組み合わせる人が多いものです。
ですが、自分の主軸となるスタイルを意識することで、ルート設計や予算配分のヒントが見えてきます。
それぞれのスタイルには、向いている地域・交通手段・宿泊スタイル・旅のペースがあります。
この章では、私自身の経験や多くの旅人を見てきたなかで見えてきた、代表的な3タイプ(節約型・快適志向型・異文化体験型)のスタイルを紹介します。
まずは自分が「何を旅で得たいのか」「何を優先したいのか」に目を向けてみてください。
節約型|費用を抑えて長く旅をする
できるだけ安く、できるだけ長く旅をしたい人に向いたスタイルです。
物価の安い地域やLCC、陸路移動を組み合わせて、旅の自由度と期間を最大化できます。
安宿&節約生活型
ドミトリーやホステルを拠点に、屋台やローカルフード、自炊などで日々の出費を抑える旅。
タイ、インド、ネパール、グアテマラなど、長期旅行者が集まる国でよく見られます。
陸路・乗り合い旅型
バスや鉄道、乗り合いタクシーなどローカル交通を活用し、国境をまたいで移動するスタイル。
移動には時間がかかりますが、その分ローカルとの出会いや文化の変化を感じやすくなります。
アフリカ縦断や東南アジア横断など、時間のある旅に適しています。
快適志向型|都市インフラと効率を重視する旅
治安や清潔さ、宿の快適さ、移動のしやすさなどを重視し、ストレスなく世界を巡りたい人に向いたスタイルです。
比較的予算は高くなりますが、限られた時間で質の高い体験を得たい人や、仕事との両立を前提とした旅にも適しています。
都市滞在型
欧州や北米、シンガポールなど、インフラが整った都市を中心に巡る旅。
移動は飛行機や高速鉄道、滞在はホテルやアパートメントが基本となります。
リモートワークとの相性も良く、短期間でも深い体験が得られます。
アート・グルメ型
美術館や音楽、建築、食文化などを旅の目的に据えたスタイル。
パリやフィレンツェ、ニューヨークなど、文化的体験が豊富な都市をめぐることで、旅そのものに“厚み”が生まれます。
時短周遊型
まとまった時間が取れない中でも、コンパクトに世界一周を実現したい人向け。
乗り継ぎ効率や直行便を重視し、ルート全体を効率的に組み立てるのが特徴です。
会社員の長期休暇や転職前の有休消化での旅などによく見られます。
異文化体験型|価値観を揺さぶる旅
「知らない世界を見てみたい」「自分の常識が通じない場所に行ってみたい」といった探究心を原動力に、文化や自然、現地の人との出会いを求める旅のスタイルです。
効率よりも“深さ”を優先し、あえて遠回りを選ぶこともあります。
ローカル交流型
現地の人との自然な会話やふれあいを通じて、文化の中に入り込むような旅。
市場でのやり取り、シェアタクシーでの雑談、ローカル宿の滞在などがきっかけになります。
遺跡・歴史探訪型
ピラミッド、マチュピチュ、アンコールワットなど、世界各地の遺跡や歴史的建造物を巡る旅。
単なる観光地としてではなく、歴史の背景や宗教的な意味を学びながら体験することで、旅の奥行きが深まります。
自然・絶景探訪型
ウユニ塩湖、アマゾン、パタゴニア、ナミブ砂漠など、都市から離れた場所にある壮大な自然を目指すスタイル。
アクセスの困難さや移動の負荷を超える、圧倒的な体験が得られるのが魅力です。
世界一周の旅スタイル別に見る、代表地域一覧
世界一周のルートを考えるとき、「行きたい国をつなげばよい」と思いがちですが、実際には「どんな旅をしたいか(旅スタイル)」によって、訪問すべき国や地域は大きく変わってきます。
ここでは、私自身の旅の経験や他の旅人の傾向も踏まえて、「節約型」「快適志向型」「異文化体験型」の3スタイルに分類し、それぞれに適した代表地域を一覧でまとめました。
各地域の特徴を知ることで、自分のスタイルに合ったルートをイメージしやすくなるはずです。
節約型:費用を抑えて長期旅を実現
旅費を抑えながら長く旅を続けたい人に向けた地域一覧です。
物価や移動コストが低く、ローカル体験がしやすい国々を中心にまとめています。
地域 | 代表国例 | 特徴 |
---|---|---|
東南アジア | タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス | 安宿・屋台・バス移動が充実。旅人の交流も盛ん |
南アジア | インド、ネパール、スリランカ | コスパ最強だが体力・情報力・衛生対策が必要 |
東欧・バルカン | セルビア、ジョージア、ブルガリア | 欧州内で物価が安く、文化的にも奥深い |
中央アジア | ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン | 旧ソ連+イスラム文化の交差点。人懐っこく旅人に優しい |
中米 | グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル | マヤ文化とローカルな暮らし。語学留学・ボランティアにも人気 |
一部アフリカ | モロッコ、エジプト、ウガンダ | 旅費は安めだが交渉力・現地情報に頼る場面が多い |
快適志向型:都市滞在で安全・安心の旅を
治安や設備面を重視し、都市を拠点に安心して旅をしたい人に向けた地域です。
デジタルノマドや短期滞在にも適しています。
地域 | 代表国例 | 特徴 |
---|---|---|
西欧 | フランス、ドイツ、オランダ、スペイン | インフラ充実。都市観光・グルメ・交通の利便性が高い |
北欧 | スウェーデン、デンマーク、フィンランド | 治安・衛生・景観重視の旅人向け。ただし高コスト |
北米 | アメリカ、カナダ | 英語圏で便利。航空網も発達し、都市滞在型に向いている |
東アジア | 日本、韓国、台湾 | 食事や文化が親しみやすく、設備も整っている |
オセアニア | オーストラリア、ニュージーランド | 自然と都市のバランスが良好。直行便が多く旅しやすい |
南米・南部圏 | アルゼンチン、チリ、ウルグアイ | 欧州文化の影響があり、都市滞在型に適した環境 |
一部東欧・黒海圏 | ジョージア、ルーマニア、ブルガリア | 安全かつ整備された都市が増加中。リモートワークにも人気 |
異文化体験型:価値観を揺さぶるディープな世界一周
旅を通して価値観を広げたい人に向けた地域です。
文化的な衝撃や現地の人々との深い関わりが待っています。
地域 | 代表国例 | 特徴 |
---|---|---|
中東文化圏 | イラン、トルコ、ヨルダン | イスラム文化と歴史が融合。人々との距離感が旅の魅力 |
コーカサス圏 | ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン | 旧ソ連+宗教文化の多層構造。物価も安く、親日感情が強い |
東アフリカ | エチオピア、ケニア、タンザニア | 部族文化や自然と密接な暮らしが体験できる。移動には工夫が必要 |
西アフリカ | セネガル、ガーナ、モーリタニア | フランス語圏中心。陽気な人々とユニークな伝統が楽しめる |
南部アフリカ | 南アフリカ、ナミビア、ザンビア | 自然との調和が強く、文化・景観両方を体験できる。比較的安全 |
アンデス高地圏 | ペルー、ボリビア、エクアドル | 高山都市と自然・遺跡が融合。標高順応や体力対策が必要 |
アマゾン圏 | ブラジル(マナウス)、ペルー東部 | ジャングル体験・ボート移動など、都市とは異なる旅体験ができる |
秘境・辺境圏 | パラグアイ、スリナム、ガイアナ | 情報が少なく準備必須だが、他では得られない出会いや体験がある |
南アジア文化圏 | ネパール、ブータン、バングラデシュ | 精神文化や山岳信仰が色濃い。観光インフラは限定的 |
中央アジア遊牧圏 | キルギス、カザフスタン、タジキスタン | 草原文化・ソ連遺産・自然が交錯する未知の魅力が詰まった地域 |
自分のスタイルに合った地域のイメージがつかめたら、次は実際のルートをどう設計するかを考えていきましょう。
スタイル別 世界一周ルートの実例
旅のスタイルが見えてきたら、次は実際のルートをどう構成するかという話になります。
ここでは、私自身の体験や多くの旅人たちのルートをもとに、代表的なスタイルに沿った「モデル世界一周ルート」を具体的に紹介します。
「節約型」「快適志向型」「異文化体験型」、そして筆者が実際に実行している「実践型」の4つです。
それぞれのルートに、特徴・費用・日数・注意点などを整理しているので、自分の旅のイメージと重ねながら、設計のヒントにしてみてください。
節約型 世界一周ルート(コスト重視で物価安地域をつなぐ旅)
できるだけ安く、できるだけ長く旅を続けたい。
そんな願いに応えてくれるのが、この節約型ルートです。
出費を最小限に抑えつつも、豊かな時間と異文化体験を得られる構成で、世界一周の現実味が一気に高まります。
このスタイルの特徴
・旅の自由度と期間を最優先
・物価の安い地域を中心に構成し、移動・宿泊・食費を徹底して工夫
・東南アジアや南アジアを起点に、中央アジア、東欧、中南米へと進む
旅先では、ゲストハウスやドミトリーを拠点に、屋台飯や市場の総菜、ローカル交通を活用。
“節約”とはいえ、生活を切り詰めるのではなく、地域の暮らしに入り込むような感覚がこの旅の醍醐味です。
モデルルートの流れ
- 日本(出発)
東京 → バンコク(LCC) - 東南アジア(タイ・ベトナム・カンボジア・ラオス)
安宿と屋台文化、LCC移動で柔軟な滞在が可能。旅人の情報も豊富。 - 南アジア(インド・ネパール)
世界最安クラスの物価。長期滞在向けの拠点も多数。 - 中央アジア・コーカサス(ウズベキスタン・ジョージア)
旧ソ連とイスラム文化の交差点。ビザ緩和で旅しやすくなっている。 - 東欧・バルカン(ブルガリア・セルビア・アルバニア)
欧州の中でも比較的物価が安く、観光地としての混雑も少ない。 - 中南米(ボリビア・ペルー・メキシコ)
市場グルメ、夜行バス、ローカル宿を駆使して費用を抑えながら滞在。 - アメリカまたは韓国経由で帰国
メキシコシティ → ロサンゼルス or ソウル → 日本
滞在費・航空券の目安
- 滞在費:月5〜9万円(国によっては1日1,000円以下も可能)
- 航空券代:30〜50万円(LCC・プロモ運賃を活用)
- 合計:約80〜120万円(6か月を想定)
節約型では、航空券は都度手配も選択肢になりますが、特定区間だけ世界一周航空券を組み合わせる「ハイブリッド型」も有効です。
向いている人と注意点
このルートは、以下のような人に向いています:
- 時間をかけて、深く旅をしたい人
- 地元の暮らしに近いスタイルで旅をしたい人
- 情報収集や移動手段の確保に柔軟に対応できる人
一方で注意点もあります:
- 長距離バスや陸路移動が多く、体力が求められる
- ローカル宿や交通の快適性は限定的
- 安全や健康を守るには、現地情報と自分の判断が欠かせない
この旅は、あらかじめ整えられたルートをなぞるものではありません。
節約のなかで何を選び、何を削るか。その選択の積み重ねこそが、旅そのもののかたちをつくっていきます。
快適志向型 世界一周ルート(安全・効率・上質を追求した旅)
知らない国を巡る旅であっても、できるだけストレスなく過ごしたい。
そんな人に向けて、安全性やインフラの整備、快適な宿や移動手段を重視した世界一周ルートです。
慣れない土地でも安心して行動できる都市をベースに、清潔で働きやすい環境、効率的な交通網、美しい景観や文化体験を組み合わせていきます。
このスタイルの特徴
・治安・衛生・移動のしやすさを最優先
・都市部を中心に移動し、滞在の快適さを確保
・高品質な交通手段(鉄道・フルサービスキャリア)や宿泊施設を選択
このルートは、旅に慣れていない人や、仕事との両立を前提とする人にとっても現実的な構成です。
限られた時間でも質の高い体験を得たい人にとって、有力な選択肢となります。
モデルルートの流れ
- 日本(出発)
成田 or 羽田 → シンガポール - 東南アジア(シンガポール・マレーシア)
英語対応・都市と自然の両立・整備された交通と宿泊環境 - オセアニア(オーストラリア or ニュージーランド)
自然と都市のバランス、治安と清潔さの水準が高い - 西ヨーロッパ(フランス・イタリア・スペイン)
美術館や建築、都市文化を楽しみながら快適に移動可能 - 北欧または中欧(ドイツ・オランダ・オーストリア)
鉄道網が発達し、英語も通じやすい。都市ごとの文化も多彩 - 北米(アメリカ・カナダ)
都市滞在と自然観光の両立が可能。働きながらの旅にも適している - ハワイまたは韓国経由で帰国
バンクーバー or ロサンゼルス → ホノルル or ソウル → 日本
滞在費・航空券の目安
- 滞在費:月20〜30万円(ホテル・外食中心)
- 航空券代:60〜100万円(ビジネスクラス or レガシーキャリア中心)
- 合計:約180〜250万円(6月を想定)
なお、快適性と柔軟性を両立させるために、世界一周航空券を基本にしつつ、必要に応じてLCCや鉄道も組み合わせるのが効果的です。
向いている人と注意点
このルートは、次のような人に適しています:
- 世界一周はしてみたいが、極端な冒険は避けたい
- 快適な宿・交通手段を重視したい
- 仕事や副業と両立しながら旅を続けたい
一方で、次のような点には留意が必要です:
- 為替や物価の変動により、費用がかさみやすい
- 文化的な衝撃や“異文化に没入する感覚”は得にくい
- 快適さに慣れすぎると「旅している実感」が薄れることもある
都市の魅力を最大限に活かしつつ、旅のストレスを抑えるこのスタイルは、長期のリモートワークやハネムーンにも適しています。
快適さを確保したうえで、自分なりの旅を楽しむという選択も、世界一周のひとつのかたちです。
異文化体験型 世界一周ルート(価値観の揺らぎを楽しむ旅)
知らない世界に出会いたい。自分の常識が通じない場所で、何かを感じてみたい。
そんな感覚を大切にする人にとって、異文化体験型の世界一周ルートは、単なる移動ではなく『価値観を揺さぶる旅』になります。
観光地を駆け足で巡るのではなく、生活に根ざした文化や、宗教、自然、言語、人との関わりを通して、世界を“内側から”見つめていく。
体験の強度は高く、時に戸惑うこともありますが、そのひとつひとつが旅の記憶として深く残ります。
このスタイルの特徴
・文化・宗教・生活スタイルの違いに触れることを重視
・あえてアクセスの悪い地域や、情報の少ない国にも足を運ぶ
・効率や快適性よりも、未知との出会いや衝撃の強さを優先
このスタイルでは、あらかじめ計画されたスケジュールよりも、「その土地に身を委ねて過ごす」ような柔軟さが求められます。
観光地では味わえないような、深く印象に残る出会いが生まれやすい構成です。
モデルルートの流れ
- 日本(出発)
東京 → タイ(LCC) - 東南アジア(ミャンマー・ラオス・カンボジア)
仏教文化、山岳民族、僧院体験、素朴な村の暮らしなどが体験できる - 南アジア(インド・ネパール)
強烈な宗教文化、貧富の格差、ヨガや聖地巡礼など精神的な旅の要素も - 中東・北アフリカ(ヨルダン・エジプト・モロッコ)
イスラム圏の礼節や食文化、バザール、砂漠の暮らしに触れる機会が多い - サブサハラ・アフリカ(エチオピア・ウガンダ・セネガル)
村落滞在や伝統文化との出会い、宗教儀式や現地のリズムを体感 - 南米(ボリビア・ペルー・コロンビア)
アンデスの高地生活、先住民文化、ラテンアメリカの信仰と暮らしの融合 - 北米またはヨーロッパ経由で帰国
コロンビア → ロサンゼルス or マドリード → 日本
滞在費・航空券の目安
- 滞在費:月7〜11万円(地域差大。物価は安くても移動費は嵩みがち)
- 航空券代:35〜60万円(片道手配や複雑な周遊になる傾向)
- 合計:約100〜150万円(6か月を想定)
世界一周航空券の柔軟なカスタマイズや、LCC+陸路移動の組み合わせを駆使することで、予算を抑えつつ奥地まで足を伸ばすことが可能です。
向いている人と注意点
このルートに向いているのは、次のような人です:
- 世界を「観る」より、「感じたい」人
- 常識に縛られず、現地の人や文化と深く関わりたい人
- 多少の不便や予測不能な状況を楽しめる人
一方で、注意点も明確です:
- 治安や衛生、水回りの不安定さなど、事前の情報収集が必須
- 長距離移動・待ち時間・ビザ取得など、旅の負担が大きい場面もある
- 異文化への敬意と、価値観の違いを受け入れる姿勢が求められる
感動や衝撃は、ガイドブックには載っていない場所にこそ潜んでいます。
このルートは、旅の終わりに「自分が少し変わった」と感じられるような、内面の旅でもあるかもしれません。
実践型 世界一周ルート(仕事と体験の両立旅)
旅をしながら、働きつづける。
このスタイルは、単なる観光でも、単なるノマド生活でもありません。
私自身が現在進行形で実践している世界一周ルートをもとに、異文化体験とリモートワークを両立させる旅の設計例を紹介します。
都市インフラと通信環境の確保を最小限に抑えながらも、より多様な文化圏に滞在するため、世界一周航空券とLCC・陸路を組み合わせた柔軟な構成を採用しています。
このスタイルの特徴
・仕事の継続を前提としながら、異文化体験を優先
・都市の快適性は必要最小限。通信環境と作業時間を確保できればOK
・世界一周航空券をベースに、LCCや陸路移動も自在に活用
「働く」「旅する」「感じる」のすべてを成立させるには、移動ペース・時差・仕事の負荷なども含めて、旅程全体を緻密に設計する必要があります。
モデルルートの流れ(筆者の実例)
- 日本(出発)
東京 → バンコク(LCC) - 東南アジア(プノンペン → バンコク → ジャカルタ)
近距離LCCや陸路を使いながら、都市の多様性と食文化を体感 - アフリカ東南部(エチオピア → ジンバブエ → ザンビア → 南アフリカ)
都市と自然、歴史と日常が交差する体験。ビクトリアフォールズやダナキル砂漠なども訪問 - 東アフリカ(タンザニア:ダルエスサラーム → キリマンジャロ)
野生動物や山岳文化、スワヒリ圏の暮らしと宗教 - 中東・北アフリカ(エジプト → トルコ)
歴史遺産と宗教文化の交差点。イスラム文化圏の多様性に触れる - 南米(チリ → アルゼンチン → ウルグアイ → ブラジル)
LCCで近隣国を横断しながら、都市と田舎、言語と音楽、多様なラテン文化を体験 - 中米・アマゾン(ボゴタ → マナウス → パナマ → エルサルバドル → メキシコ)
ジャングルから植民都市、スペイン語圏の多彩な国々を踏破 - 北米経由で帰国
メキシコ → サンフランシスコ → 東京
滞在費・航空券の目安
- 滞在費:月15〜25万円(地域により大きく変動)
- 航空券代:約150万円(世界一周航空券ビジネスクラス+LCC・陸路)
- 合計:約250〜300万円(6か月を想定)
仕事の種類や収入源に応じて滞在期間や地域を調整しやすく、仕事の繁忙期は都市で腰を据え、閑散期は地方や自然豊かなエリアへ移動するような設計が可能です。
向いている人と注意点
このルートは、次のような人に向いています:
- フリーランスやリモートワーカーで収入がある人
- 異文化への関心がありつつ、業務継続が必須な人
- 都市滞在に頼りすぎず、環境の変化にも柔軟に対応できる人
注意点としては以下の通りです:
- 通信環境(SIM・Wi-Fi)や作業環境の確保が不可欠
- 時差や移動の影響で、仕事と旅のバランスを崩しやすい
- 世界一周航空券のルールと、LCC・陸路の自由度との調整には工夫が必要
このルートは、旅を「生活」として設計する挑戦でもあります。
観光の合間に仕事をするのではなく、「旅をしながら働く」ことを前提に組み立てることで、日常と非日常がひとつにつながるような感覚が生まれてきます。
ルート設計でありがちな失敗と満足度の高いルートの特徴
世界一周のルートは、自由なようでいて意外と罠が多いものです。
理想的な地図を描いていても、実際に移動してみると「体力が持たない」「費用がかさむ」「文化が単調」など、後悔につながることも少なくありません。
ここでは、ありがちな失敗パターンと、満足度の高かったルートに共通する特徴を整理し、実際の旅設計に役立つヒントを紹介します。
よくある失敗パターン
- スケジュール詰めすぎで疲弊
移動続きで観光に集中できず、ただ「通過する旅」になってしまう。 - 気候を無視して訪問先を決定
雨季に突入して屋外観光が不可能、寒すぎて宿から出られないなどの問題が発生。 - LCCや陸路で安く抑えたつもりが合計は割高に
細かい移動の積み重ねや、都市間のアクセスの悪さで、かえって時間と費用をロス。 - ビザや入国要件の確認が甘くトラブルに
現地での出国航空券提示義務、空路限定のビザなどで予定が狂う。 - 似た文化圏が続いて刺激が薄れる
「欧州ばかり」「東南アジアばかり」で、だんだん感動が小さくなる。
満足度の高いルートの共通点
- 自分のスタイルと目的に合った地域選定
異文化に浸りたい人は中東・アフリカ、快適性を重視するなら欧州・北米といった選び方。 - 長距離移動に“緩急”がある
数日で次へ進む場所と、1〜2週間腰を据える都市のバランスが絶妙。 - 都市と自然、空路と陸路を組み合わせている
移動手段や滞在地に変化があり、飽きがこない。 - 訪問時期と気候の調整がしっかりされている
南米の乾季、アフリカのベストシーズンなどを見越した設計。 - 「偶然の出会い」が生まれやすい余白がある
毎日予定を詰め込まないことで、現地の人との会話や予想外の体験が生まれる。
ルート設計を成功に導くヒント
- 旅のテーマや優先したいことを書き出しておく
「世界遺産に触れたい」「コーヒー文化を巡りたい」など。 - 航空券購入前にビザと気候のカレンダーを必ず確認
国によっては大使館で事前取得が必要だったり、陸路不可なケースも。 - 長期移動の合間に“休憩都市”を挟む設計
たとえばイスタンブール、リスボン、メキシコシティなどは長期滞在もしやすい。 - 異文化重視型であれば「都市滞在は最小限」に
筆者(私)のルートでは、あえて快適都市の滞在を短くし、地方や異文化圏に重点を置いた。
地域ごとのルート設計で気をつけたいこと
世界一周のルートを組むうえで、各地域の特徴や注意点を知っておくことは非常に重要です。
一見似たようなエリアに見えても、距離感・物価・アクセス・治安・ビザなど、旅のしやすさには大きな違いがあります。
ここでは、主要な地域ごとに「事前に知っておくべきポイント」を整理して紹介します。
東南アジア・南アジア:初心者向けだが暑さと衛生に注意
- LCC網が発達しており、物価も安いため、節約型ルートには最適な地域。
- 気軽に旅できる反面、熱中症や衛生環境による体調不良には注意が必要。
- 陸路での国境越えも可能だが、ビザ要件は国によって差がある(例:インドは事前のeビザ申請が必要)。
中東・アフリカ:文化の魅力大、だがビザと治安の壁あり
- 異文化体験を重視する人には非常に面白い地域。歴史・宗教・生活スタイルすべてが新鮮。
- 治安は国によって大きく異なる。夜間移動や国境周辺には注意が必要。
- ビザが高額だったり、取得手続きに時間がかかる国も多い。
- 航空券が高く、都市間移動に苦労する場面も。
欧州・北米:快適だが物価が高く、移動費も高め
- 交通網やインフラは整っており、旅のしやすさは世界トップクラス。
- ただし物価・宿代・交通費の高さは計画に大きな影響を与える。
- シェンゲン協定による滞在制限(90日ルール)には注意。
- 安く回りたい場合は東欧・ポルトガル・バルカン半島などが穴場。
南米:ルート設計が難しいが、異文化体験の宝庫
- 自然・文化・人との出会いなど、圧倒的な体験が得られる地域。
- 南北に長く広いため、移動には飛行機が必要になることも多い。
- 治安面で不安がある国もあり、都市の選び方には注意。
- 陸路国境は多いが、出入国に航空券提示が求められるケースもある。
中央アジア・コーカサス・ロシア圏:情報が少ない分、冒険感あり
- ジョージア、アルメニア、ウズベキスタンなどは近年人気上昇中。
- ノマドビザ制度や長期滞在に向いた国もあり、拠点にもなる。
- 公共交通や英語対応はまだ弱く、旅慣れた人向け。
- 航空路線が限られるため、ルート全体の構成に影響を及ぼす。
オセアニア・南太平洋:航空券が高いが季節を活かせば◎
- オーストラリアやニュージーランドは物価が高いが、自然や都市のバランスが魅力。
- 他地域からのアクセスが少なく、航空券が高くなりがち。
- 季節が逆転しているため、旅全体の気候調整に役立つ。
- 小国・島国は行けるチャンスが限られるため、行くなら一気にまとめて訪れるのが理想。
世界一周ルートに関するよくある質問(FAQ)
世界一周の計画段階で「ルート設計」に関してよくある質問をまとめました。
航空券の取り方やスタイルの選び方、旅の順番など、実体験をもとに答えています。
Q. 「世界一周」と名乗るには何カ国・何大陸回ればいいですか?
A. 厳密な定義はありませんが、一般的には3〜5大陸以上、10〜20カ国前後を訪れる旅が多いです。
ただ、重要なのは訪問数よりも内容。自分にとって価値ある体験ができたなら、それが“自分にとっての世界一周”です。
Q. どの地域から回るのがオススメですか?
A. 初心者であれば、東南アジア→中東→欧州→南米という「西回り」がオススメです。
理由は、安くて滞在しやすいエリアから入り、徐々に旅慣れていく構成が組みやすいため。
ビザ・治安・物価のバランスも考慮してルートを組むと◎。
Q. 世界一周航空券とLCC・片道手配、どっちがいいですか?
A. 訪問エリアと重視したい価値によります。
広範囲に、かつ快適に回るなら世界一周航空券が効率的。
一方で、特定エリアを深掘りするならLCCや片道手配の方が自由度は高いです。
どちらかに絞る必要はなく、実際には組み合わせる人も多いです(私もその1人)。
Q. 陸路移動は取り入れるべき?
A. 距離や国境事情に応じて、陸路移動は非常に有効です。
例えばアフリカ(ジンバブエ〜ボツワナ)や南米(ウルグアイ〜アルゼンチン)などでは、バスや鉄道での国境越えが主流。
コストだけでなく、旅の“リアル”を感じられる手段としておすすめです。
Q. 訪問国をどうやって絞ればいいかわかりません。
A. 「どんな体験をしたいか」から逆算するのがコツです。
・異文化体験がしたい → 中東、アフリカ、南米奥地
・快適な都市滞在がしたい → 欧州、北米
・自然やアウトドア → パタゴニア、アフリカ内陸、中央アジア
あとは季節と予算とのバランスを見ながら、エリアをつなげていきましょう。
まとめ:自分にとっての「最高の世界一周ルート」を描こう
世界一周は、航空券の取り方や費用、ルート構成、スタイル選びなど、決めるべきことが多くあります。
それだけに「自由」で「正解がない」旅でもあります。
このページでは、代表的なスタイルやルート例、訪問地域の特徴までを網羅してきましたが、最終的に大事なのは「自分にとって価値のある旅になるか」という視点です。
- 旅のテーマは何か?
- どんな体験をしたいのか?
- 自分のペースに合った移動方法は?
すべての答えが見つからなくても大丈夫です。
むしろ、その「手探りの過程」こそが世界一周の醍醐味だと私は思っています。
この記事が、あなた自身のルート設計を始めるきっかけになれば嬉しいです。